「ビットコインの9月は平均12%下落」を全部自分で計算したら、違う数字が出た
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本記事は公開データの集計であり、投資助言ではありません。過去の傾向は将来の値動きを保証しません。
明日から9月です。この時期になると毎年、「ビットコインの9月は歴史的に弱い。過去14年で9回下落、月間平均12%の下落」という記事が出回ります。今年も複数の媒体で見かけました。気になったのは、どの記事も同じ数字を引用し合っていること。計算過程を載せているところは、一つも見つかりませんでした。
当ブログの方針は「電卓で確かめられることは自分で確かめる」なので、全部計算し直しました。
計算方法(誰でも再現できます)
- データ: Bitstamp(2011年から続く取引所)の公開APIの日足終値、BTC/USD
bitstamp.net/api/v2/ohlc/btcusd/?step=86400&limit=1000&start=... - 月次騰落率 = その月の最終日足終値 ÷ 前月の最終日足終値 − 1(UTC基準)
- 期間: データが存在する2011年8月〜2026年8月
9月の結果(2011〜2025年、15回分)
| 年 | 9月の騰落率 |
|---|---|
| 2011 | −39.8% |
| 2012 | +20.3% |
| 2013 | −1.4% |
| 2014 | −18.4% |
| 2015 | +2.8% |
| 2016 | +6.6% |
| 2017 | −8.6% |
| 2018 | −6.0% |
| 2019 | −13.5% |
| 2020 | −7.5% |
| 2021 | −7.0% |
| 2022 | −3.2% |
| 2023 | +4.0% |
| 2024 | +7.4% |
| 2025 | +5.4% |
下落は15回中9回で、2011〜2024の14年で数えても9回です。全部の年の平均は−3.9%(中央値 −3.2%)、2011年を除くと平均は−1.4%でした。
「9回下落」は本当。「平均12%」にはカラクリがあった
「過去14年で9回下落」は再現できました。ここは正しい数字です。
問題は「平均12%下落」という数字です。15年分を普通に平均しても、14年分にしても、−12%はどうやっても出てきません(−1〜−5%の範囲)。私の計算でこの数字を再現できた方法はただ一つ、下落した9年だけを取り出して平均することです(−11.7%)。
出回っている数字は、おそらく「下がった年に限れば平均12%下がった」という意味でしょう。「9月の平均騰落率が−12%」とは違う話で、この2つは意味がまったく違います。前者なら「9月は平均して大きく下がる月」ですが、後者は「下がるときは12%下がるが、上がる年も6回あって、全部ならすと−4%」。さらにその−4%も、ビットコインが8ドルだった2011年の−39.8%が一人で押し下げており、それを除けば−1.4%。「歴史的に弱い9月」の実像は、この程度の話にすぎません。
ついでに12ヶ月全部計算した
| 月 | 下落回数(15回中) | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 7 | +4.4% | +0.7% |
| 2月 | 5 | +10.0% | +11.1% |
| 3月 | 8 | +11.6% | −1.8% |
| 4月 | 5 | +11.2% | +8.1% |
| 5月 | 7 | +8.9% | +3.4% |
| 6月 | 7 | −0.1% | +2.1% |
| 7月 | 4 | +9.8% | +8.3% |
| 8月 | 9 | +3.1% | −6.5% |
| 9月 | 9 | −3.9% | −3.2% |
| 10月 | 5 | +14.4% | +11.0% |
| 11月 | 6 | +36.5% | +8.8% |
| 12月 | 8 | +6.9% | −3.2% |
表を眺めると、9月アノマリー説の足元がさらに揺らぎます。
8月も15回中9回下落で、中央値(−6.5%)は9月より悪くなっています。「歴史的に弱い月」を1つ選ぶなら、データ上は8月のほうが候補。それでも「魔の8月」という記事は出回りません。11月の「平均+36.5%」は、2013年11月にビットコインが約5.5倍になった1回が平均を吊り上げているだけで(中央値は+8.8%)、標本15個の世界では平均という統計量そのものが暴れます。直近3年(2023〜2025)の9月は、3年連続プラスでした。
12ヶ月から最悪の月を選べば、必ず「アノマリー」は見つかる
ここが本題です。12個の月からいちばん成績の悪い月を選んで「〇月は魔の月」と名付ければ、どんなランダムなデータからでも必ず1つは「アノマリー」が生まれます。n=15で12回くじを引けば、偏った月は確率的に出ます。それが本物の構造なのか偶然なのかは、この標本数では区別できません。
だから、うちの自動売買はカレンダーを見ません。「9月だから売る」をやらないのは、9月説の当否にかかわらず、この種の「過去データを漁れば見つかる規則性」を戦略に入れると、偶然に賭けることになるからです(同じ理由で棄却した手法は他にもたくさんあります)。ボットが実際に何を見て売買しているかは成績ページとガチホとの並走比較で毎朝公開しています。
似た話として、「月利10%」を謳う商材が統計的にありえない理由は、以前に電卓だけで計算した記事のとおり。数字は、引用で済ませず計算してみると、だいたい味わいが変わります。
集計は2026年8月31日時点。データ出典はBitstamp公開API(BTC/USD)。円建てでは為替の影響で数値が多少ずれます。本記事は情報の整理であり、特定の売買を推奨するものではありません。詳細は免責事項をご覧ください。