本記事は国税庁の公表資料と筆者自身の記録に基づく一般的な情報の整理であり、個別の税務相談・税額計算・申告内容の助言ではありません。ご自身の申告については、税務署または税理士にご相談ください。制度は改正されます。必ず最新の国税庁のページをご確認ください。

私は現役の大学生で、仮想通貨の自動売買を2026年8月19日〜9月6日に実口座で運用し、9月6日からは同じ戦略を紙上(実際のお金を動かさない記録)で続けています(成績は毎日公開)。運用を始める前にいちばん時間をかけて調べたのが税金で、正確には「いくらまでなら親の扶養に響かないのか」でした。調べてすぐ気づいたのは、ネットの記事の大半が古いことです。「103万円の壁」「48万円まで」といった数字は、令和7年度(2025年)の税制改正で総入れ替えになり、令和8年度(2026年)の改正で、2026年分からもう一段引き上げられました。二段構えで変わったせいで、片方だけ反映した記事が大量に残っています。この記事は、2026年分(令和8年分)に実際に適用される数字を、国税庁の一次情報だけで組み立て直したものです。

学生が意識する数字は4つ

給与(バイト代)がなく、仮想通貨の利益だけがある19歳以上23歳未満(2026年12月31日時点)の学生を想定します。年間の利益(所得)ベースでは、次の数字です。

数字 超えると何が起きるか 出典
62万円 親の控除が「扶養控除(63万円)」から「特定親族特別控除」に切り替わる。金額は同じ63万円なので、親の税負担はまだ増えない 改正のあらまし p.2
85万円 親側の「特定親族特別控除」が満額(63万円)から減り始める。親の税負担が実際に増え始めるのはここから 同 p.2 の控除額表
104万円 本人に所得税がかかり始める(基礎控除104万円を超えるため) 同 p.1
123万円 親側の特別控除が完全にゼロになる(ここも改正前と同じ) 同 p.2 の控除額表

※令和8年分・令和9年分(2026年・2027年分)の数字です。令和10年分以後は基礎控除が変わる予定(104万→99万円)で、以後2年ごとに物価で見直されます。住民税は自治体により基準が異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。

所得税と親の控除だけを見ると、85万円までは何も変わらず(62万円で親側の控除は名前が変わりますが、金額は63万円のまま)、85万〜123万円で親側の控除が段階的に減り(63万→3万円)、104万円を超えると本人に所得税がかかる、という3段構えです。ただし本人の住民税は別で、単身なら合計所得45万円(1級地の場合。基本額35万円+10万円)を超えるとかかり始めます。「1円でも超えたら扶養が吹き飛ぶ」という古い理解より、制度はなだらかになりました。

「103万円の壁」で調べると答えが合わない理由

まず令和7年度改正で数字が総入れ替えになり、令和8年度改正でもう一段動きました。

  • 基礎控除: 48万円 → 95万円(令和7年分)→ 104万円(令和8・9年分。合計所得489万円以下の場合。学生ならまず該当する)
  • 給与所得控除の最低保障: 55万円 → 65万円 → 74万円(令和8・9年分)
  • 扶養親族の所得要件: 48万円以下 → 58万円以下 → 62万円以下
  • 特定親族特別控除(19歳以上23歳未満、令和7年新設): 対象範囲が所得58万円超〜123万円以下 → 62万円超〜123万円以下に

「103万円の壁」は旧制度の「基礎控除48万+給与所得控除55万」の合計です。前提の数字が二度変わったので、この言葉で検索して出てくる計算は、2026年分にはもう合いません。

厄介なのは、2026年8月時点では、国税庁のタックスアンサー(No.1180・No.1199 など)自体がまだ「令和7年4月1日現在法令等」のままで、古い数字(58万・95万)が表示されることです。令和8年分の正しい数字の原典は、国税庁が2026年4月に出した 「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」PDF です。ネット記事の大半どころか国税庁の解説ページを見ても気づけない構造なので、この記事では数字ごとにこの PDF のページを出典として付けています。

罠① 150万円の壁は給与の話で、2026年分は159万円に動いた

バイト代なら年159万円稼いでも、給与所得控除74万円が引かれて所得85万円になり、親側の特別控除は満額のままです。令和7年に「150万円の壁」と呼ばれたものは、令和8年分では159万円の位置に動きました(150万のまま解説しているページは令和7年度改正までしか反映していません)。仮想通貨には、このどちらも効きません。

ところが仮想通貨の利益は雑所得で、給与所得控除がありません。利益がそのまま合計所得金額になります。同じ「壁」という言葉でも、バイトなら159万円の位置にある壁が、仮想通貨では85万円の位置にあります。給与の感覚で仮想通貨の利益を考えると、74万円ぶん見誤る計算。

罠② バイト併用の人は10万円が最初の分岐点

バイトをしている学生には、勤労学生控除(27万円)という制度があります。この要件は「合計所得金額89万円以下」(令和8年分から。改正のあらまし p.2。令和7年分は85万円)かつ「勤労によらない所得が10万円以下」(No.1175)です。

仮想通貨の利益は「勤労によらない所得」にあたります。バイトと仮想通貨を併用する学生は、仮想通貨側の利益が10万円を超えた時点で、勤労学生控除が使えなくなります。この論点を書いている記事はほとんど見かけませんが、国税庁のページには要件として明記されています。

罠③ 「20万円まで申告不要」はバイトをしている人のルール

「20万円以下なら確定申告不要」という有名な話は、No.1900にあるとおり、給与を受けている人(年末調整で完結する給与所得者)の特例です。給与のない学生には、この20万円ルールは適用されません。給与がない場合の申告要否は、上の基礎控除(104万円)などで決まります。

罠④ 日本円にしていなくても「利益」になる場合がある

国税庁の暗号資産FAQ(令和7年12月版)によると、課税のタイミングは売却に加えて、暗号資産で商品を買ったとき、別の暗号資産に交換したときも、譲渡として利益計算の対象になります。「円に戻してないからノーカウント」は誤解。

私の場合(一人称の記録であり、助言ではありません)

私は2026年8月19日〜9月6日に月1万円の規模で実口座の自動売買をしていて、その期間の利益は数百円レンジでした(9月6日からは紙上の記録。実データ)。私が意識している数字は、まず10万円(バイトと併用しているため)と62万円(親の扶養)です。この規模なら当面は何も起きませんが、暗号資産には、評価方法の届出(出さなければ総平均法・A1-20)など、利益が出てから慌てると面倒な論点があります。始める前に一度、この記事の出典リンクを一巡しておくことをおすすめします。

なお、20%の申告分離課税への移行は決まりましたが、2026年分はまだ雑所得・総合課税です(詳細はこちらの記事)。

この記事でできないこと

個別の税額計算や、「私の場合はどうですか?」へのお答えはできません(税理士法2条・52条により、他人の求めに応じて税額の計算などの相談に応じることを業として行えるのは、無償の場合も、税理士と税理士法人に限られます)。具体的な相談は、税務署の相談窓口または税理士へお願いします。

計算ページ: 学生の年収の壁 2026年分・自動計算(バイト+仮想通貨の利益を入れると、どの行に当たるかを表示)

計算ページ: 仮想通貨の利益で税金はいくら増えるか(給与+雑所得・2026年分の所得税と住民税)


本記事は2026年8月31日時点の公表情報(令和8年度税制改正まで反映)に基づく一般的な情報の整理であり、税務相談ではありません。投資助言でもありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。詳細は免責事項をご覧ください。