本記事は私自身の運用の記録であり、投資助言ではありません。掲載する数字は特定期間・特定の計算条件による検証値で、将来の成果を示すものではありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。

結論を3行で。

  • 14日間、本当にほったらかせました。システムが何もしなかった日が9日で、人間がやった作業は入金1回だけです。
  • 放置を成立させるために、売買の本体3,388行に対してテストを10,946行書きました。テストの本数は537本です。放置は楽をすることではなく、面倒を全部前倒しすることでした。
  • 実際に事故も起きました。8月21日、注文が板に載らないまま1日が終わり、246円(当時の口座の4.7%)を取り逃しています。儲かった話でもありません。9月2日時点の損益は+13円で、同じお金をただ積み立てた場合(+584円)に負けています。

14日間、システムは何をしたか

実口座(自分のお金を入れた口座)で動き始めたのは2026年8月19日。翌20日から9月2日までの14日間、毎朝9時10分に無人のサーバーが判断し、必要なら注文を出しています。内訳は次のとおり。

その日の動き 日数
静観(何もしない) 9日
買付(注文が約定した) 4日
注文不成立(指値が届かなかった) 1日

約定した4日はこれだけ。

日付 買った量 金額
8/20 0.0001 BTC 1,100円
8/22 0.0002 BTC 2,474円
8/31 0.0001 BTC 1,241円
9/1 0.0008 BTC 10,060円

14日で売買が起きたのは4回で、金額にして14,875円ぶんです。「ほったらかし」の実体は、ほとんどの日に何も起きないことでした。数字は成績ページに毎朝そのまま出ていて、生データも公開しています。

人間がやった作業は「入金1回」

この14日で私がしたことを全部書きます。9月1日に10,000円を振り込みました(所要時間は数分)。あとはDiscordに毎朝届く通知を見ただけで、見なくても運用は変わりません。値動きは見ておらず、売買の判断にも一度も関与していません。判断に人間が入る余地を残すと、自動売買が「手動売買のリマインダー」になってしまいます。だから最初から、その口を塞いでいます。

初月の入金は、10,000円ではなく5,274円。開始日の入金の都合による差。「月1万円がきれいに積み上がる」という絵と実務が違うのは、前の記事に書いたとおりです。

放置のために作ったもの

ここが本題。放置できているのは、放置に耐える設備を先に作ったからで、私が偉いわけではありません。その量を数えました。

項目 実測
売買を実行する本体のコード 19ファイル・3,388行(うち発注部分だけで1,956行)
そのテストコード 10,946行(本体の3.2倍)
テストの本数 537本
検証・研究用のスクリプト 49ファイル・24,784行
最初のコミットから実口座の開始まで 14日(2026-08-05 → 08-19)
現在までのコミット 142回

本体よりテストの方が3倍多いことが、放置の費用構造をよく表しています。人間が毎日見ているなら、おかしな動きはその場で気づけます。見ないと決めた瞬間に、「おかしな動きが起きないこと」を事前に証明しておく必要が生まれます。その証明がテスト。

実口座に入れる前には、故障注入テスト(わざと通信を切る・応答を壊す)も回しました。そこで7件の疑義が見つかりました。たとえば「発注の応答を取りこぼすと、板に残った注文を見失って同じ日に二重発注しうる」といったもの。全部塞いでから、実口座にお金を入れました。運用開始後にも、記録の壊れ方を潰すガードを10件足しています。

コードを書いたのは私ではありません。高校時代に自作した自動売買プログラムは採算が合わずに畳んだ経験があり、今回は一行も自分で書かず、AI(Claude)に指示しただけです(作った手順の全体)。作業は委任できても、「何を守らせるか」を決める仕事だけは委任できませんでした。

放置を支える4種類の「止める仕組み」

ほったらかしで一番怖いのは、暴走と静かな停止。うちで効かせているのは次の仕組み。

仕組み 内容
資産クラスの制限 現物のみ・レバレッジ禁止。借金と追証が構造的に発生しない
発注の上限 1回5万円まで、1日12回まで(暴走しても被害が有限)
緊急停止(キルスイッチ) 直近30日の運用リターンが−25%を下回ったら全部売って停止。再開は人間が原因を調べたときだけ
APIキーの権限 参照と取引のみ。出金権限を付けない
想定外の入金 決めた額を超える入金は投資に回さず取り置く
障害時の既定動作 データ欠損・通信エラーのときは「何もしない側」に倒す

最後の行が、地味に一番効きます。障害時に「とりあえず売る」でも「とりあえず買う」でもなく、何もしないで通知だけ出します。放置系のシステムで人間が損をするのは、たいてい機械が慌てたとき。

キルスイッチについては、過去7.5年ぶんの日足で発動条件を検証しました。2,748回の判定で発動は0回、3年以内に鳴る確率は4.0%(約75年に1回)です。同じ式をただ積み立てただけの運用に当てると10回鳴ります。普段は一度も仕事をしない装置が正しい姿だと思っています。

それでも壊れた、8月21日の246円

ここが記事の中で一番大事なところ。設備を作っても、事故は起きました。

8月21日、システムは買いの判断をして指値注文を出しました。ところがその注文は板に載っていませんでした。記録に残っている指値より安い取引がその後1時間近く続いたのに、約定はゼロ。同じ日に取引所のAPIからエラーコードも観測されています。注文そのものが実在しなかったという事故でした。

この日のことを、当時の1週間目の記録では「指値がついに約定しないまま終わった」と書き、相場がその値段まで来なかっただけだと解釈していました。注文自体が板に無かったと分かったのは、そのあとログを調べてからでした。

損失額は約246円。当時の口座は5,273.5円だったので、4.7%にあたります。手数料を1年ぶん最適化して稼げる金額(口座15,000円で年3.2円)の、およそ77年ぶんです。

対策として、発注の直前に板を取り直してから注文を出す処理を、8月25日から有効にしました。この一件から学んだのは、もっと単純なことでした。放置で失うお金の主因は、相場でも手数料でもなく事故。

静かに止まっている状態を作らない

自動売買で一番多い死因は、暴落よりも、誰にも気づかれずに止まっていることだと思っています。動いていることを別の系統から確認する仕組みは、運用とは分けています。たとえば毎朝、判断・発注・残高の結果がDiscordに届きます。届かないこと自体が異常の合図。週1回はレビューが自動で走り、成績・データ品質・安全機能の作動状況を記録します。さらに週1回、そのレビューが実行されたかどうかを別の仕組みが見張り、通知を出します。

「監視が止まっていないかを監視する」層があるのは、たぶんやりすぎに見えます。それでも、放置とは通知が来ないことを正常だと信じることなので、その信頼を支える層は多いほうがいいと考えました。

ほったらかしで儲かってはいません

同じ粒度で負けも書きます。9月2日時点の数字。

運用 評価額 損益
ただ毎月積み立てる(ガチホ) 15,858円 +584円
毎日積み立てる 15,330円 +56円
AIの自動売買(うち) 15,287円 +13円

累計入金は3つとも15,274円。この14日は上げ相場だったので、いちばん早く全額を投じるガチホが勝っています。私の戦略は下げを浅くすることを狙った設計で、上げ相場では構造的に出遅れます(ガチホとの並走データ)。

8月28日には損益が+260円まで行き、9月2日には+13円まで戻りました。ほったらかしていても、資産は毎日上下します。そこを見ないで済むのが放置の効用で、上下しなくなるわけではありません。

これから放置する人が先に決めておくこと

実際に順番として役に立ったのは3点。

  1. 「いくらまで減ったら止めるか」を、始める前に数字で決めます。 減ってから決めると、その時点の気分が決めます。うちはこれをコードに焼いて、人間には変えられないようにしました。
  2. 止まったことに気づく手段を、運用とは別の系統で用意します。 通知が来ないことに気づけるのは、通知とは別の仕組みだけです。
  3. 入金の頻度と金額を先に決めて、それ以外の操作をしないと決めます。 相場を見て入金額を変えれば、その時点で放置は終わります。

逆に、放置に向かない人も先に書いておきます。値動きが気になって眠れない人と、半年以内に使う予定のお金しか余っていない人。「放置」は仕組みの性質であり、人の性質でもあります。

この記録の限界

まず、14日ぶんしかありません。しかも上げ相場だけで、下げ相場で本当に放置できるかは分かっていません。キルスイッチはまだ一度も鳴っておらず、設計は検証しましたが、実口座で作動したところは見ていません。数字は税引前で、利益が出れば申告が必要になります(税金のまとめ)。口座の規模は1万5千円台なので、金額が大きくなったときに同じ設計でよいかは、その時にまた検証します。

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