本記事は国税庁・財務省の公表資料に基づく一般的な情報の整理であり、個別の税務相談・税額計算・申告内容の助言ではありません。特定の売買を勧めるものでもありません。ご自身の申告については税務署または税理士にご相談ください。制度は改正されます。最新の国税庁のページをご確認ください。

10月を過ぎると「年内に利確しておくべきか」「損出しはしたほうがいいのか」という話が急に増えます。私は月1万円の自動売買を2026年8月19日〜9月6日に実口座で回し、9月6日からは紙上で記録を続けています(成績は毎日公開)。この年末は、運用をAIに丸投げしてから初めて迎える年末になります。年末に何を考えることになるのかを、先に国税庁の一次情報だけで組み立てておきました。

先に要点を3行で。

  • 2026年分(令和8年分)の暗号資産の利益は、まだ雑所得・総合課税。損失は他の所得と通算できず、翌年にも繰り越せません(国税庁FAQ 2-11)。「今年の損を来年の利益にぶつける」は現行制度ではできません
  • 売却の損益がどちらの年に載るかは、原則「引渡しがあった日」。選択によって「契約をした日(約定日)」にもできます(同 2-1)。年末ぎりぎりの売却は、この規定で年が変わりえます
  • 当ブログのbotは、年末だからという理由では何もしません。その理由は最後に書きます

年内に売るか持ち越すかで動く3つ

売買のタイミングで動くのは、次の3つだけです。「これから上がるか下がるか」は表の外側の話で、私には分かりません。

何が動くか 年内に売った場合 持ち越した場合
今年(2026年分)の所得 売った分の損益が2026年分に載る 2026年分には載らない(含み益・含み損のまま)
扶養・課税ラインの判定 その損益を含めて2026年分で判定される 判定は2027年分以降に回る
取得価額(原価) 売った分だけ減り、残りが翌年の原価になる そのまま翌年へ持ち越される

注意したいのは、日本円に戻していなくても「売った」ことになる場合がある点です。暗号資産で商品を買ったときや別の暗号資産に交換したときも、譲渡として損益計算の対象になります(FAQ 1-2・1-3)。年末に銘柄を入れ替えると、本人の感覚では「まだ現金化していない」のに、税金の側では今年の損益が確定しています。

前提1 雑所得の損失は通算も繰越もできない

年末の損益調整は、株式や投資信託の常識をそのまま持ち込むと事故ります。前提の制度が違うからです。

国税庁の暗号資産FAQ「2-11 暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い」には、こう書かれています。

雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。

所得税法上、他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られます。

(「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」 令和7年12月最終改訂・p.32。同趣旨はタックスアンサー No.2250 損益通算・No.1500 雑所得にもあります)

翌年への繰越も、現行ではできません。繰越の対象になる「純損失」は、No.2070にあるとおり「損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額」です。雑所得の損失はそもそも損益通算の入口に立てないので、純損失にならず、繰り越すものが発生しません。

ここから素直に出てくる帰結は2通り。

  1. 年をまたいで損を持ち越す意味がありません。年末に損を確定させても、その損は2026年分の雑所得の中でしか使えません。株の「損出しして翌年に繰り越す」に相当する動きは、現行の暗号資産にはありません
  2. 同じ年の中でなら、雑所得どうしは相殺できます。年内に利益と損失の両方がある場合、雑所得の中で合算した結果がその年の所得になります(通算できないのは「他の所得」との間です)

なお、20%の申告分離課税に移行すれば、損失の3年間の繰越控除が入ります。これは令和8年度税制改正で法律になっている(所得税法等の一部を改正する法律、2026年3月31日成立)一方、適用の始まる日はまだ確定していません(金商法改正の本体の施行日を決める政令が出ていないため。2027年1月1日か2028年1月1日のどちらか)。「繰り越せない」は今の話で、いずれ変わります(決まったこと・決まっていないことの整理はこちらの記事に)。

前提2 所得になる年は引渡日が原則で、約定日も選べる

年またぎで一番効いてくるのに、ほとんど書かれていない論点です。FAQ「2-1 暗号資産取引による所得の総収入金額の収入すべき時期」(p.15)の原文。

原則として売却等をした暗号資産の引渡しがあった日の属する年分となります。ただし、選択により、その暗号資産の売却等に関する契約をした日の属する年分とすることもできます。

12月末に売った1件が、2026年分にも2027年分にもなりえます。年末年始をまたぐ注文では、約定した日と受け渡しの日が別の年に分かれることがあるからです。「12月31日に売ったから今年の利益」と思い込んで扶養のラインを計算すると、前提から外れる可能性があります。

同じ論点は原価の側にも効いてきます。年末時点でいくら残っているか(=翌年の原価)は、その売却をどちらの年に入れたかで変わるのです。原価の計算方法(総平均法・移動平均法)そのものの話は、自動売買botの確定申告の記事で、同じ取引を両方式で計算して所得が17,437円ズレた実例として書きました。方式は届け出なければ総平均法で、変更したい場合の届出期限は初めて取得した年分の確定申告期限までです(国税庁 A1-20)。

2026年分の確定申告期間は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)まで。年末の判断が申告の形になるのは、3か月ほど先。

扶養・課税ラインをまたぐ人は、こう計算する

ここで示すのは指示ではなく、線をまたぐ人が何を計算することになるかの整理です。2026年分(令和8年分)の数字は、「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」が原典です(国税庁のタックスアンサーは2026年9月から「令和8年4月1日現在法令等」に順に更新されていますが、No.1180 扶養控除・No.1175 勤労学生控除は本文がまだ旧い数字で、2026年分の数字は注に書かれています)。

数字 誰の税金か 超えると何が起きるか
10万円 本人 バイト以外の儲けが10万円を超えると、勤労学生控除が使えなくなる(2026年分の所得税額は変わらず、変わるのは住民税の勤労学生控除26万円の側)
62万円 親 扶養控除から特定親族特別控除に切り替わる(金額は63万円で同じ。親の負担が増え始めるのは85万円から)
85万円 親 親側の特定親族特別控除が満額(63万円)から減り始める
104万円 本人 本人に所得税がかかり始める(基礎控除104万円を超えるため)
123万円 親 親側の控除が完全にゼロになる

※ 令和8年分・令和9年分の数字です。住民税は自治体により基準が異なります。数字ごとの根拠と、バイト側の壁(136万円・159万円・178万円)との違いは学生向けの記事と税金まとめにまとめてあります。

この表と年またぎを重ねると、計算の順番は次のとおりです。

  1. 今年ここまでの雑所得を出します。年初から今日までに確定した売却・交換・決済の損益を合算します(含み益は入りません)
  2. バイト代がある人は合計所得を出します。合計所得 = (バイト代 − 74万円、マイナスなら0) + 仮想通貨の利益。「10万円の線」と「62万円の線」は別制度の数字なので、足し算しません
  3. 年内にあと売る予定があるなら、その損益を1に足して線を越えるか見ます。越えるなら、その売却がどちらの年分になるか(前提2)まで含めて確認します

3で「越える」と分かったときに何をするかは、その人の事情次第です。翌年に回せば2026年分の判定からは外れますが、2027年分には載ります。税金の線を理由に売買のタイミングを決めることの是非まで含めて、当ブログでは助言しません。ここまでが情報の整理で、判断はご本人と、必要なら税理士の領域です。

当ブログは年末にbotを触りません

私の運用は、AIが設計した戦略が毎朝1回だけ判断し、人間は月1万円入れて放置するという構成です(仕組みはこちら)。この年末、私は年末を理由にした売買を一切しません。理由は3点。

1. botの判断規則に「年末」という変数が無いから。 この戦略が見ているのは移動平均線と直近の値動きの荒さだけです。そこに「12月だから利確する」を人間が差し込めば、機械的な戦略は私の裁量に変わります。裁量を入れないことがこのシステムの設計思想そのもので、個人トレーダーの89%が負けるという統計から出発して裁量を捨てた経緯があります。カレンダーを理由にした売買をしないのは年末に限らず、「ビットコインの9月は平均12%下落」という説を2011年からの日足で計算し直したときも同じでした(15回中9回の下落は再現できましたが、全部の年の平均は−3.9%でした)。その規則性は戦略に入れていません(計算の全部)。

2. 触ると、公開している比較データが壊れるから。 当ブログは同じ入金額でガチホ・毎日積立・AI運用を並走させて毎朝自動更新しています。年末に私が手で売買すれば、その日以降の数字は「AIの成績」とは呼べなくなります。一次データを出すと決めた以上、こちらの都合で触れません。

3. そもそも2026年分は所得ゼロだから。 実口座で運用した2026年8月19日〜9月6日のbotの売却は0件でした(9月6日からは紙上の記録なので所得になりません)。売却がなければ所得は発生しないので、今年の私に関しては、年末の損益調整という論点自体が発生しません。

来年以降、売却が出て扶養の線に近づく規模になったときに何を考えるかは、そのときの実データと一緒に書きます。今の段階で「こうするのが有利」と言えることは何もありません。

なお、個別の税額計算や「私の場合はどうですか?」へのお答えはできません(税理士法2条・52条により、他人の求めに応じて税額の計算などの相談に応じることを業として行えるのは、無償の場合も、税理士と税理士法人に限られます)。相談は税務署の窓口か税理士へ。

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計算ページ: 学生の年収の壁 2026年分・自動計算(バイト+仮想通貨の利益を入れると、どの行に当たるかを表示)


本記事は2026年9月2日時点の公表情報(令和8年度税制改正まで反映)に基づく一般的な情報の整理であり、税務相談でも投資助言でもありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。詳細は免責事項をご覧ください。